「青木くん、出張について来てくれる?」
「野古島よ」
フェリーで一時間ばかり離れた小さなで、糸岡市の数少ない観光地の一つだ。豊かな自然が見どころで、島全体がテーマパークのようになっているが、700人ほど住民もいるらしい。
おじいさんの孫娘の調子が良くないらしい。
「一緒にいきましょう」
手元には船内に連れて行けるように、黒猫の入ったケージを抱えている。彼女は普段の白衣を羽織って部屋の中にいる時と違って軽やかで爽やかな服装をしていた。白いつば広の帽子は彼女の赤茶色の髪に映えていて、紺色のワンピースは彼女の白い肌に映えている。風に揺られて帽子のリボンと、ワンピースのスカートがひらひらと揺れている。帽子が飛んで行かないように帽子を抑えている。海を背景に彼女の横顔を見つめていた。小さく尖った鼻が美しい。花びらのような唇をキュッと結んで、眼前に見える野古島を見つめている。
僕は彼女の薬箱と道具一式を持っている。首には一眼レフカメラもかけている。
まるでデートじゃないか。彼女と出かけられるなんて、最高だ。
「楽しみですね。船着場の売店のラムネが名物らしいです。着いたら飲みましょう。あ、アイスキャンディもあるらしいです。レトロで」
「あくまで治療で
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